山田流箏曲「松風」

山田流箏曲の名曲の一つとされる作品です。作曲は、初代中能島検校(1838 – 1894)と、三代山木検校(1835/37 – 1871/73)の合作。本来は、三曲合奏(箏、三絃、尺八)という形式で演奏されることの多い作品ですが、ここでは三絃パートの抜粋を演奏しています。幕末の頃、伊達家の姫君が松平家に輿入れしたものの、間もなく夫と死別し、夫を忍ぶために「松風」という銘の箏を新調し、夫を慕う箏歌「松風のしらべそへたるつま琴は千代のためしにひくべかりしを」を詠んだ、という言い伝えがあります。

十布の菅ごも三布にねし
昔しのべば割爪の わりなき中もなかなかに
なに裏ずりの恨みごと 袖は涙の波がへし
かへる袂を引連に 秋の夜長し長かれと
名残はつきぬ筑紫筝 海とよぶ名にゆかりある


松風(初代中能島検校、三代山木検校作曲)
演奏:木村伶香能(三絃)*旧姓の木村陽子で掲載されています。
録音:洗足学園音楽大学 伝統音楽デジタルライブラリー(2009年)